子どもの一生は「2歳までに決まる」という悪魔的理論について
皆さんは「子どもの一生は2歳までに決まる」という恐ろしい理論をご存知でしょうか(主張者は岡田尊司氏など)。
今回は、この理論を批判的に紹介するのですが、前知識として、
- 愛着→子どもと特定の母性的人物とのあいだの強い心の絆
- 愛着形成→愛着を作ること
というプチ専門用語を覚えておいてください。
まあ、要するに今回は、
「2歳までに愛着形成できないと子どもは不幸になる」説
の話をしていきます。
1. 愛着形成【2歳まで】
愛着形成が行なわれるのは生まれてから2歳になるまでの間です。
この時期に親がすべきことを、まずは見ていきましょう。
1-1. 生後六カ月まで
この時期は愛着形成という観点からは、あまり重要ではありません。親を見分けることができないからです。
1-2. 生後六カ月~二歳
生後6カ月を過ぎる頃から幼児は親を見分けられるようになります。
その頃から大体2歳頃までが愛着形成をする上で最も重要な時期です。
生まれてから1歳半くらいから、せいぜい2歳までが、愛着が成立する上でのタイムリミットである。この時期に愛着が形成されなかった場合、子どもは、養育者との間に安定した愛着を持つことができないだけでなく、誰との間にも安定した愛着を育むことが困難となる。(岡田尊司『回避性愛着障害』)
(色文字は引用者)
岡田氏は、ここでは「養育者」と言っていますが、著作全体を通して「母親」との愛着が大事だと主張しています。
1-2-1. 愛着が築けなかった場合
それでは、2歳までに母親との愛着が築けなかった場合、子どもにどのような被害が出るのでしょうか。
まとめると、
- 他人と仲良くなれない
- うつや不安障害などの精神疾病
- 薬物やアルコールや性への依存症
- 恋愛・結婚が上手くできず、離婚もしやすい
- 健康や寿命にも影響
- ストレスを感じやすい
- いじめや非行を起こす
- ロリコンなどの性癖をもつ
などのリスクを抱えるとのことです。
1-2-2. 母親は何をすべきか
この時期の母親に必要とされるのは
十分なスキンシップとともに、母親が子どもの欲求を感じとる感受性をもち、それに速やかに応じる応答性を備えていること(岡田尊司『愛着障害』)
だそうです。
これらが不充分だと、先ほど書いたリスクを子どもが抱えてしまうわけですね。
2. 愛着形成【2歳以降】
1歳半~2歳頃から子どもは活発に動き回れるようになるのですが、
子どもがそのようになれるかどうかは、母親が[安全基地]として機能しているか否かにかかっています。
2-1. 安全基地の登場
愛着形成がきちんとできた母親は[安全基地]として機能するようになります。
【安全基地とは】
- 困った時や恐怖を感じた時に助けてくれる存在のこと。
- 「いつでも逃げ帰れる安全な場所」という意味で安全基地と呼ばれる。
子どもは、この[安全基地]としての親の助けを借りながら、自由に動き回れる範囲を広げていくわけですね。
2-2. 母親が安全基地になれなかった場合
逆に言えば、母親と愛着形成できなかった子どもは[安全基地]を持っていません。
その結果、先ほど書いた様々なリスクを抱えるわけですから、もう一度誰かが[安全基地]の役割を担う必要があります。
ちなみに、岡田氏は、
という、かなり$くさい話を著作で堂々としています。
3. まとめ
今回は「2歳までに愛着形成できないと子どもは不幸になる」説を紹介しましたが、ぶっちゃけ科学的根拠はありません。
私たちは母親以外の人からもバッチリ影響を受けるし、2歳までのことを記憶することなどできません。
というわけで、
「2歳までに愛着形成できないと子どもは不幸になる」説=かなり$くさい話だから、この手の話に騙されないで!
という公共交通機関(AC)のような事を言いつつ、今回はドロンさせて頂きます。