飯塚幸三事件から「自尊心」の欠点を学ぼう
先日、池袋暴走死傷事故の初公判が行なわれ、飯塚幸三被告の無反省な態度が話題になりましたが、
この一連の事故を通して「自尊心に関する議論」について思い出したことがあるので、今回はそれも含めて、池袋暴走死傷事故について書いていこうと思います。
1. 自尊心に対する一般的イメージ
カウンセリング業界では、「自尊心の高い人」は目指すべき、素晴らしい存在だとされています。
1-1. 自尊心の高い人の特徴
例えば、岡田尊司氏いわく、「自尊心の高い人」は、
- 他人を信頼している
- 他人に気を使い過ぎない
- 他人の意見に左右されない
などの特徴を持っています。
そのため、ストレスをためることなく、健康的に生きていくことができるわけですね。
1-2. 自尊心の低い人の特徴
一方、岡田氏は「自尊心の低い人」を、
他人との関係が上手くいかず、病みやすく、非行・犯罪に走りやすい
という評価を下しています。
しかし、これらのイメージは岡田氏だけではなく、もしかしたら、多くの人が抱いているのかもしれません。
2. 高過ぎるのも問題
教育研究者のジュディス・リッチ・ハリスはそのような考え方に疑問を呈します。
2-1. 自尊心の高過ぎる人の特徴
ハリスによれば、非行・犯罪に走りやすいのは、むしろ「自尊心の高過ぎる人」だとのことです。
2-1-1. カッとなる
例えば、近年の研究では、
暴力行為は、過度な自尊心が脅かされたときに起る場合がもっとも多い
ということが指摘されています。
まあ、これは「自信過剰な者がプライドを傷つけられてカッとなる」ということなので、納得できる話ではないでしょうか。
『半沢直樹2』の伊佐山みたいな感じですね。
2-1-2. 「強運がある」と思いがち
しかし、「自尊心の高過ぎる人」には、もう一つ大きな特徴があります。
彼ら彼女らは、自分は不死身で強運の持ち主だと思う傾向が強いらしいのです。
そのため、例えば、
- 飲酒運転やスピード違反
- 避妊をしない性行為
などをしても「自分は大丈夫だ」と思ってしまいます。
2-2. 無責任な行動
言い換えると、
- 「自尊心が低い人」は、他人を意識し過ぎて、自信を持って行動できない
- 「自尊心が高い人」は、自分の判断で行動できる
しかし、「自尊心が高過ぎる人」は思い切った行動はするものの、自分の行動には、むしろ無責任になるようです。
3. 飯塚幸三の真の問題点
池袋暴走死傷事故に話を移します。
3-1. 事故の詳細
この事故は、「高齢によって判断力が低下したために起った事故」と思われていますが、それだけではありません。
実は、飯塚幸三被告は、
制限速度以上のスピードでカーブに進入したり、車を追い越すため3回も車線変更(蛇行運転)をしたりしていたそうです。
つまり、もともと飯塚被告は危険な運転をしていたわけですね。
3-2. 問題は高齢だけではない
もちろん、高齢によって事故が起こったという面もあるでしょう。
この事故をきっかけに高齢ドライバーの免許の自主返納が増えたらしいのですが、
それよりもまず、飯塚被告の「自分は事故を起こさないだろう」という自信過剰さが事故を招いたという点を批判するべきでしょう。
このような「過剰な自尊心」は年齢問わず問題を引き起こします。
ちなみに、飯塚被告は無罪を主張しているようですが、これも「自尊心の高過ぎる人」特有の無責任さなのかもしれません。
4. 最後に
それでは「高過ぎる自尊心」はどうすれば良いのか、というと、
心理学やカウンセリングは「低い自尊心をいかに高めればいいのか」の研究に偏っているため、「高過ぎる自尊心」についての解明は進んでいないのです。
よって、明確な答えを書くことはできませんが、
自尊心は「とりあえず低かったらダメで、どんどん高めた方が良い」という単純なものではないとは言えるでしょう。