子育ては母親に押し付けるべき?精神科医の答えは…
今回は、
子育ては母親にやらせるべきだ!
― 何でですか?
母親が望んでいるからだ!
― 望んでいない母親もいるのでは?
そう見えても本能では母親は子育てをしたがっているのだ!
― ・・・(´・ω・;)
という、めちゃくちゃな主張をする精神科医の話をします。
1. 母親の影響力の大きさ
「母親が子育てをやるべきだ!」と主張するのは愛着理論(愛着障害の理論)です。
と言っても、愛着理論にもバリエーションがあります。しかし、
- 日本で最も有名な岡田尊司バージョン
- 伝統的な愛着理論の考え方
では、子どもに対する母親の影響力の大きさを強調します。
1-1. 岡田尊司の場合
例えば、岡田氏は、
母親は、子どもの対人関係だけではなく、ストレス耐性や不安の感じ方、パートナーとの関係や子育て、健康や寿命に至るまで、生存に関わる影響を、それこそ生涯にわたって及ぼす。やはり特別な存在なのである。(岡田尊司『回避性愛着障害』)
(赤文字は引用者)
と述べます。
1-2. 伝統的な愛着理論の場合
伝統的な愛着理論を踏襲している高橋和巳氏は、
私たちはどうあっても、母親との愛着関係、その有無も含めて、に縛られて人生を歩み出す。(高橋和巳『「母と子」という病』)
と述べます。
愛着関係とは、特定の重要な人物(多くは母親)と子どもの間の心の絆のことです。
要するに、高橋氏は、母親との心の絆が幼児期に出来なければ、人生は不幸になるといっているわけです。
1-3. 一応、ツッコミ
一応言っておくと、
現代の科学では「子どもの一生は親の育て方で決まる」とは考えません。
しかも、「子どもの一生は母親の育て方で決まる」なんていうのは尚更です。
しかし、岡田氏のような考え方をする人もいて、しかも結構、世間に対する影響力が強いということは覚えておいても良いと思います。
2. 愛着システムとは
そうは言っても、世間の人々の多くは、母親に子育てを押しつけるようなことはしないでしょう。
「イクメン」などの言葉もありますしね。
しかし、岡田氏はこのような風潮に異議を唱えます。
乳離れするまでの間、母親は子どもを体に密着させているか、そうでないときでも、手元におき、目を離そうとしない。それは、愛着システムによって生存が支えられている哺乳類の本能である。その本能に背くことは、子どもにも、母親にも無理を強いることになる。(同上)
愛着システムというのは「子が母親を求め、母親が子どもを守る生物学的な仕組み」だと思ってください。
このように、
「本能」や「生物学的な仕組み」を持ち出して、母親が子育てをするべきだと主張するわけですね。
また、岡田氏が「乳離れするまでの間(2歳頃まで)」と述べていることにも注目してください。
ぶっちゃけ、岡田氏の理論は、
子どもの一生は2歳頃までの母親との接し方で、おおよそ決まる
というものなので、2歳以降に頑張って愛情を注いで子育てをしても、ちょっと厳しいと言っている風にも聞こえるのですが、
その辺はさて置き、話を進めましょう。
3. 本能や無意識
私たちは「本能」とか「無意識」とか言われたら、つい信じてしまいますよね。
岡田氏も、
意識レベルを超えた、本能・無意識レベルにおける「子どものそばにいたい」という母親の欲求
を持ち出して、母親が子育てをすべきと主張します。ですが、
- そんな本能・無意識は本当にあるのか?
- 哺乳類の本能は人間の子育てと関係あるのか?
などを疑わなければなりません。
さらに、岡田氏は、
- 女性の社会進出
- 保育園や託児所
にも否定的なのですが、それについては今度話そうと思います。