「兄や姉がいると精神が狂う」説って知ってる?
世間では、
- 長男はしっかり者
- 末っ子は臆病
などの、出生順位で性格は変わる説がまことしやかに囁かれていますが、それから100歩進んで、
「弟や妹は精神が狂いやすい」説を提唱している精神科医もいます。
今回はこのキテレツな主張の実態に迫っていきましょう。
1. 岡田尊司的愛着障害
「弟や妹は精神が狂いやすい」説を提唱しているのは、精神科医の岡田尊司氏です。[愛着障害]関連の多数の著作でお馴染みの岡田先生ですね。
1-1. 愛着障害とは
愛着障害への解釈は精神科医の間でも微妙に異なるようですが、岡田氏の場合、
2歳までに母親との間に強い心の絆が出来なかった場合に生じる様々な障害
というのが岡田氏の愛着障害の定義です。
※ちなみに、母親は「養母」でもかまいません。
1-2. 母親じゃなきゃダメ
岡田氏の著作を読んだことがある方ならわかると思いますが、
岡田氏の著作には「母親の子育てが不適切だった場合に起る、子どもの様々な不幸」について、これでもかと言わんばかりに書き連ねてあります。
正直、大半がこじつけのようなものなのですが、その「不適切な母親の子育て」の一つに、
実の親に育てられた子どもでも、同居する祖父母や親戚が可愛がってくれるからというので、母親があまり可愛がらなかった場合、後年、精神的に不安定になるということは、しばしば経験するものである。(岡田尊司『愛着障害』)
(赤文字は引用者)
というものがあります。
ここでは「同居する祖父母や親戚」となっていますが、後述するように、「兄や姉」にもあてはあります。
要は「母親が子どもを一番圧倒的に可愛がれ」ということですね。
1-3. 兄や姉に可愛がられたとしても…
強調しますが、岡田氏の「弟や妹は精神が狂いやすい」説は、
兄や姉にいじめられたから精神が狂うのではなく、兄や姉に可愛がられたとしても母親が充分に可愛がらなかったら精神が狂う
という主張です。
かなりテンションが下がる主張ですよね。
2. ジャン・ジュネの場合
「弟や妹は精神が狂いやすい」説の代表的人物は、フランスの作家のジャン・ジュネです。
2-1. 愛着障害の症状
ジュネは里子でした。しかし、里親の家族から非常に可愛がられました。
にもかかわらず、岡田氏によると、ジュネは愛着障害になったそうです。その際の症状は、
- 反抗的な性格
- 被害妄想
- 盗癖
などなど。
2-2. 良い母親だったのにもかかわらず…
ジュネが愛着障害になった理由として岡田氏が挙げるのは、
面倒をみたのが、養母だけではなく、娘のベルトや、もう1人里子として預かっていたリュシーという10歳の女の子だった(同上)
ここで注意しなければならないのは、
養母はジュネを非常に可愛がる良い母親だったのにもかかわらず、家の事情で娘たちにも幼いジュネの面倒を見てもらわざるを得なかった
ということです。
3. 絶対に母親に子育てさせたいマン
この主張は共働きやシングルマザーの家庭の方にとって、驚くべきものではないでしょうか。
もし仕事の都合で母親が子どもの面倒の一部を兄や姉に頼んでいると、その子はきっと不幸になりまっせ
というわけですから。
しかし、この主張には科学的根拠はありません。
おそらく、精神科医の中でも批判意見は多いはずです。
にもかかわらす、岡田氏はなぜこのような主張をしているのかというと、
岡田氏には「絶対に母親に子育てさせたいマン」としての顔が強いからでしょう。
現に岡田氏は「託児所や保育園は母親の子育本能を阻害する諸悪の根源だから無くせ!」という主張をしています。
しかし、私たちは「母親の母性本能」に全てを委ねるのではなくて、
働く母親やシングルマザーにも優しい社会を目指しましょう。